2013年2月12日火曜日

ユーミンの世界、切なく紡ぐ 貫地谷主演、芝居と歌が融合 10月、東京・帝国劇場


発行日 =2012年8月16日  ソース =夕刊
面 名 =文化芸能  ページ =3
発行社 =東京  文字数 =1026

ユーミンの世界、切なく紡ぐ 貫地谷主演、芝居と歌が融合 10月、東京・帝国劇場

 「恋愛の教祖」と呼ばれる松任谷由実の楽曲を元にした芝居に、貫地谷しほりが主演し、ユーミン自ら歌う。そんな舞台が10月、東京・帝国劇場にお目見えする。「8月31日~夏休み最後の日~」と題したこの公演、ミュージカルでもコンサートでもないエンターテインメントにするという。

 今年で27歳の貫地谷にとって、1972年デビューの松任谷は「母が大ファンで、小さいときから曲をたくさん聴いて育った」という存在だ。「一曲聴くと映画を見終わったような気分になる。声が力強いと思っていたけど、ライブを見たら少女のよう」と、印象を率直に語る。

 松任谷はテレビのドラマやナレーションで貫地谷を知っていた。初対面の際は「印象より、いい意味で気が強い人だな」と感じた。

 母娘ほど違う2人が舞台で紡ぐ恋愛は、時間を超えた普遍的なものになりそうだ。交通事故で意識不明になった一彦(吉沢悠)の元へ、別れた千佳(貫地谷)が呼ばれ、一彦の夢の中で再会する。2人が記憶をたどる旅をする場面に応じて、松任谷が歌う。いわば、芝居と音楽でユーミンソングを立体化していく。

 松任谷は、サーカス団と共演するステージ「シャングリラ」を99年から計3回催した。今回も新しいステージにするため、内容を練っている段階。芝居とは別に音楽やダンスが挿入され、演劇とコンサートを絡み合わせるようだ。

 「私のラブソングは、いま愛し合っているのに、いつかは会えなくなる、っていう宇宙観が流れている」と松任谷が説明すると、貫地谷は「だから切ないんだ」と嘆息を漏らす。

 松任谷の曲は、死をにおわせる詞が時折顔を出す。「方丈記」や「奥の細道」などに通じる無常な世界観だ。松任谷自身は、実家が商家で人の出入りが多く、「物事は同じところにとどまらない」という感覚が身についたからではないか、と振り返る。

 世代のギャップを、貫地谷は感じていない。共演の多い吉沢に対し、今回は初めて「役のうえでですけど、すごい好きになるかも。魔法にかかれたらいいな」と思ったという。

 脚本・演出は松任谷正隆。「普段している抽象的な話が、脚本に反映されている」と語るユーミン。「うーっ、かっこいい」と反応した貫地谷には「面倒くさいこともありますよ」と男女の難しさを説いた。教祖は健在だ。(井上秀樹)

 ◆10月7~31日。1万2千円、9千円。03・3201・7777(東宝テレザーブ)。
 【写真説明】
帝国劇場で顔をそろえた松任谷由実(左)と貫地谷しほり

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