2013年2月19日火曜日

侍ジャパンに立ちはだかる「日本の壁」WBC


侍ジャパンに立ちはだかる「日本の壁」WBC

http://baseballstats2011.jp/archives/24660232.html

今日、大阪は雨だが宮崎のお天気はどうなのだろう。侍Japan山本浩二監督は、昨日と今日の練習試合の結果で、33人の候補選手を28人に絞り込もうとしている。
昨日の試合は、判断材料にならなかった。もし昨日の出来で判断するなら、田中将大も前田健太も外すことになった筈だ。
立ち上がり、エースの田中の調子が悪く、球速も上がらないことは、侍Japanのベンチを消沈させた。おまけに、打線も低調で、相手投手前田健太の本調子からほど遠い球も攻略できない。ベンチには、「やばいぜ」という空気が漂ったような感じがする。
試合はいいところなく、広島に完敗した。

昨日の野球で感じたのは、良くも悪くも今の侍Japanメンバーの「同質性」の高さだった。それは「チームワークの良さ」ということもできようが、昨日のようにひとたびチームに沈滞ムードが漂いはじめると、またたくまに全体が染まってしまうということでもある。
誰かの顔色を窺うような、言い訳を探すような雰囲気がチームを包む。

先日、キャンプのことを書いたブログで、私はNPBの選手はチームが違えど同じ鋳型に嵌められて育ってきたと述べたが、そういう部分がこういうにわか作りの寄せ集めのチームであっても色濃く出ている。何か「見えない鎖でひとまとめにされているような」感じさえするのだ。 ⇒参考記事

指導者にしてみればやりやすいことはやりやすい。練習方法でも、作戦でも、共通のプロトコルがあるから、詳しく説明する必要はない。みんながやるべきことを知っていて、誰に指示されることもなく、仕事を果たすことができる。そのレベルの高さは、MLBをもしのいでいるだろう。

今回の侍Japanは結果的にMLB選手が一人も参加しなかった。私は戦力的に見て前2回と大きく見劣りがしているとは思わない。伸び盛りの投手がそろっているし、守備の名手もいる。大砲がいないが、それは前2回もそうだった。

しかしながら、今回の侍Japanは、「同質性」が高すぎることが、懸念材料だと思っている。

2006年も2009年も、日本は圧倒的な戦力で勝ち抜いてきたわけではない。幾度も劣勢に立たされながら、しぶとく窮地をしのいで勝ち星を稼ぎ、ダブルイリミネーションというけったいな方式の恩恵も受けて、優勝を勝ち取った。
試合のポイントポイントで活躍したのはMLB選手たちだった。2006年WBC決勝戦では、激しく追い上げるキューバの退路を断ったのは、テキサス・レンジャーズ=TEXの大塚晶則だった。MVPは松坂大輔だった。
2009年のWBCでは、好機に打てなかったイチローが、決勝戦で韓国から決勝打を放った。MVPはまた松坂大輔だった。

私は、WBCでNPB選手よりもMLB選手が活躍するのを偶然だとは思わない。MLBに移籍して厳しい競争にさらされながら生きる選手たちは、NPB時代にあった「見えない鎖」を断ち切って、国や学校や地域のしがらみから独立して野球をしているように思う。
「空気を読む」のではなく「自分が何をするか」を優先するような、粒立ちの良い選手になっていると思う。
MLB選手には、チームが沈滞ムードになろうとも、敗色が濃厚になろうとも、「我関せず」でプレーができる強さ、チームワークという鋳型に嵌められていた「個性」を一度バラして、再度組み立てなおしたような勁さを感じるのだ。

韓国は、野球のレベルでいえば明らかに日本よりも弱かったはずだ。レギュラー選手であっても、日本の投手には歯が立たない選手、日本の打者には通用しない投手が明らかにいた。韓国は対戦を重ねるたびに、そうした選手を外して通用しそうな選手をしぼりこんでいたが、中に何人か、火事場の馬鹿力のような能力を出す選手がいた。金泰均がそうだったし、奉重根、柳賢振もそうだった。チームの結束よりも個人の傑出を重視する。これはまさに韓国という国の国民性だろうと思った。

山本浩二監督は、MLBについて語るべき文脈がない。時代的にも経験的にも、大リーグとのかかわりがなさすぎる。日本人MLB選手にとってはなじみ深い存在ではなかったはずだ。
また、山本監督自身も、日本人がMLBで野球をする意味について、知っているとは思えない。
むしろ「NPB選手だけのほうがチームワークが良くて戦いやすい」と思った節がある。
しかし「同質性」の高すぎるチームには、試合の流れや彼我の戦力差を読みすぎて、早々に体温を下げてしまいそうな恐れを感じる。オリンピックで肝心な時に力を出せない日本人選手と同じような、「必要以上のアウェー感」がベンチに漂わないかという危惧を抱かせる。

力量的には心配していないが、そうしたメンタル面、文化面での心配をしながら、私は2013WBCを見守っている。
NPBの選手たちが、そうした「日本の壁」をぶち破ってくれることを切に期待している。

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