2013年2月12日火曜日

(人生の贈りもの)音楽プロデューサー・松任谷正隆:5 永遠に青臭く


発行日 =2012年8月10日  ソース =夕刊
面 名 =夕刊be金曜2面  ページ =4
発行社 =東京  文字数 =1133

(人生の贈りもの)音楽プロデューサー・松任谷正隆:5 永遠に青臭く

 ――1986年に音楽学校「マイカ・ミュージック・ラボラトリー」を開校されました

 僕の人生って、子どものころできなかったことの実現なんです。
 「マイカ」もその一つ。パニック障害で、小学生のころから将来は音楽教師と思っていたでしょ。当時は夏木陽介さんの「青春とはなんだ」なんて青春学園ドラマがはやっていて、僕もああいう風に自分の言葉の一言でも誰かに残したいという思いが、どこかにずっとあったんですよね。
 子ども中心の家庭のみそくさい感じは嫌だし、ガキは嫌い。だから子どもが欲しいとは思わない。でも本能として何かを残したいという思いがある。だから「マイカ」は子ども代わりかな。かみさんは絶対何かを残したいなんて思いませんよ。自分は自分でしかない。それでいいという人ですから。

 ――すでに約1800人が卒業し、2001年からはジュニアコースもできました

 音楽技術を教える学校じゃない。自分のやりたいことを見つける場なんです。ある男の子は、お父さんが「この子に何か自信をつけてほしい」と連れてきた。それで彼の演奏を少し聴いて、エリック・クラプトンを薦めてみた。小6で聴きまくって、他の生徒とバンドを組んで、いまはプロになりました。僕も子どものころは、ほんのささいなことがすごくでかい問題に思えた。それが、その後の人生を変えてしまうようなことも、よくあるんですよね。
 でも、60年生きてきて思うのは、自分がおもしろいと思ったことでしか、人間は生きていけないということ。平凡な生活の中でも、何かおもしろいと思えることを見つけているから、生きてるんじゃないかな。だから「この学校で好きなことを見つけてくれ」ってことです。

 ――車好きでモータージャーナリストとしてTV番組のキャスターもされています

 これも、幼稚園のころなりたかったのがタクシー運転手だったから。うちには車がなかった。でも僕は、動くものや操縦に興味があって、車の絵ばかり描いていた。

 ――これからの人生は?

 48歳がノストラダムスの大予言の年で、地球がなくなっても48まで生きれば、まあいいと思ってた。48歳になると、還暦まで生きればよぼよぼだからいいと。でも実際なってみると、全然よぼよぼじゃない。88歳のおやじが「こんなはずじゃなかった」というのがわかる年になってきた。「やり残したことがこれだから、これをやろう」と編纂(へんさん)する人生は嫌なんです。だから目標も持ちたくないし、永遠に青臭くいたい。今おもしろいと思える作品を作り続けるだけですね。(聞き手・宮坂麻子)=おわり

 【写真説明】
愛車のポルシェと。メルセデス、ランドローバー、アウディも持っている=東京都、麻生健撮影

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