2013年4月5日金曜日

金融政策だけで克服困難=斉藤一橋大院教授 記事


インタビュー:デフレ、金融政策だけで克服困難=斉藤一橋大院教授
http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPTYE93404P20130405

[東京 5日 ロイター] 一橋大学大学院の斉藤誠教授は5日、ロイターのインタビューに応じ、日本のデフレは国際競争力の低下に起因するものであり、金融政策だけで克服するのは難しいとの見方を示した。

日銀が新たに打ち出した大規模な国債買い入れによる量的緩和では、市中に資金が回らず、物価上昇に寄与するとは考えにくいと指摘。巨額の債務を抱えた日本経済の実態を反映し、いずれ長期金利が反転急上昇するリスクに懸念を示した。

斉藤教授は21世紀に入ってからのいわゆる「デフレ」について、「実は2002年から2007年の景気回復期は物価が安定しており、GDPデフレーターが低下したのは交易条件の悪化が理由。リーマンショック以降は確かに変化率でみるとデフレだが、07年から08年前半の価格の高騰の反動と考えると、15年にわたってデフレが続いていたとはデータとして言えない」と指摘した。

2009年以降、「円高にもかかわらず交易条件が悪化したのは、国際競争が激しくなり円ベースの輸出価格が下落する一方で、資源価格が円高のペースを超えて上昇したため。2010年から12年にかけ、所得の流出によってGDPデフレータが下がった」と語った。「日本経済は非常に厳しい国際競争にさらされており、製造業は円安だからといって設備投資や輸出をどんどん増やすことにはならないと思う」との見方を示した。

国債市場は「現在満期が5年程度まではイールドカーブが寝てしまっており、民間銀行は長期国債でしかキャピタルゲインを狙えない。短期の売買でのさやとりを今後2年間やっていく」ことになるだろうという。日銀の新たな量的緩和政策によって、「民間銀行が非常に速いペースで長期国債を回転させてキャピタルゲインを得て、売り抜けた資金を日銀の当座預金に置く。それで日銀のバランスシートが増えていく」と説明。このため、今後のシナリオは「市中に資金が回らないため実体経済にはあまり影響がなく、物価が上がるとはなかなか思えない」と述べた。

日銀の新たな政策は「物価を上げるためにバランスシートを拡大するが、実はこの仕組み自体が、金利が下がっている下で初めて成り立つもの」と解説。量的緩和のスキームでは「物価は安定しており、金利はどの満期もゼロになっていく形で均衡が生じるように感じる」と語った。ただ、「これだけ巨額の債務を抱えた国家の長期の金利がこのような低水準であるはずはなく、どこかでファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映した金利に戻る。金利が連続的に上昇するのは問題ないが、(一気に)0.5パーセントなど非連続に上昇すれば本当に大変だ」と警戒した。

(ロイターニュース 竹本能文;編集 久保信博 石田仁志)

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